Chiezaru’s diary

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読書近況


【 本 】
Nikon F4 + NIKKOR 50mm f/1.8D, Kodak color plus 200

最近読んだものを備忘録的に。

村上春樹著『海辺のカフカ』を再読。
確か今回で二度目。『風の歌を聴け』から始まった一連の長編村上作品の集大成ともいえる一冊。『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』で際立たせた二つの世界を交互に描き出すパラレルワールドのテクニックにも磨きがかかり、同時進行させる二筋の物語の先をもう一度さらに分けている。
コンピューターのクアッドコア(一つの基盤の上に二つのコア=CPUを置き、さらに一つ一つに二つの論理CPUを発生させることからOSは4つのCPUを認識する)のイメージが頭の中に浮かぶ。離れ業のようにも思えるが、持ち味の読みやすさは健在ですらすらと進んでゆける。これまでに書かれた作品で披露されたエッセンスがちりばめられて、ファンにはうれしい作品でもある。
文章はすでに達人の域で自由自在という感じ。

『アフターダーク』の前に書かれた作品群の登場人物たちは「どこに行っても、どうあがいても救われない」村上春樹的地獄ともいえる個人的暗部を抱えているが、『海辺のカフカ』を通してそれにケリがついたような印象を受けた。
一巡してスタート地点に立った主人公は『風の歌を聴け』に立ち戻ったのではないだろうか。
これからつむぐあなたのストーリーは果たして、同じものの繰り返しで無限ループに入っていくのか、さて新たな何かへ向かっていくのかという問いかけが含まれているようにも思う。

新たな一歩への試みが、氏にとってみては『アフターダーク』という形になったのだろう。求心的な物語ではなく俯瞰を念頭に置いたさらりとしたものへの。

『海辺のカフカ』のあとは久しぶりに東野圭吾を。
日本にいる友人カップルが日本グッズ満載で大きな箱を送ってくれてきて、そのなかに入っていた一冊。『時生』。
SF作品でなるほどおもしろい発想をするなぁと感心しながら読んだ。
東野氏の文章というのも非常に読み易くすばらしいと思う。
ただ村上春樹の後だと微妙に行間の密度が薄いかなという気もする。

でもジャンルとタイプが違う作家さん達だから比べるのはナンセンス。

今読んでいるのはやはり送っていただいた天童荒太『孤独の歌声』。
こちらは今三分の二くらいを進んだところ。