Chiezaru’s diary

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火曜日の映画


【 戦いを終えた拳闘士 】- ローマ国立博物館マッシモ宮
Olympus E-5 + Panasonic Leica D Summilux 25mm f/1.4

(顔、耳を見ると死闘を物語る傷と出血までリアル。)

最近はあまり書かないけれど映画はちょくちょく観ている。
昨夜は小津安二郎の『東京物語』(1953年日本)。

ヴィム・ヴェンダースをはじめ、多くの才能に支持される小津映画だが、以前この作品を観たときは20代だっただろうか。正直、判らなかった。

さて、四十路に足を踏み入れて改めて鑑賞すると、なんと辛辣な映画なことかと気づかされる。

作品の時代設定も1953年。今からほぼ60年前の当時を描いているわけだが、戦後8年にして日本人は現在と大して変らない家族観(ひいては人生観につながる)で生きていたのを見せつけられた。

淡々とした表現で、核家族化に伴う家族愛の喪失と都会のニヒルな孤独を大袈裟に表現することなくシニカルに訴えかけてくる。

冷たい日本人。自分もこの枠から除外して考えることは出来ないだろう。

外からでは見えないもの。日本人として日本の中で生きているからこそ肌で感じ、戦争で日本が失ったものを反面教師的に映し出そうとしたのかもしれない。小津映画はこの一作しか観ていないがそんな感想を持った。

おかしな言い方かもしれないけれど、空手風にいうと見事に一本取られましたという印象の秀作。

ところで、ストーリー終盤、主人公の老いた義理の父に、あなたは良い人だといわれる嫁、平山紀子役の原節子がそんことはない「私、ずるいんです」と言うシーンがある。そこだけ空気が変る感じがしてはっとする。
なんだか役の平山紀子をバイパスに原節子自身の告白のように聞こえてしまうのは自分だけだろうか。

近いうちにヴェンダースの『東京画』をみてみたいと思う。

もう一枚↓:

Olympus E-5 + Panasonic Leica D Summilux 25mm f/1.4